ヨーロッパ, その他

没落する王者デュッセルドルフは「アーセナル化」する

LINEで送る
Pocket

dhu

90年代に卓球で青春を過ごしたものにとって、正真正銘の卓球世界最強プロリーグと言えば「ブンデスリーガ」に決まっている。

いち早くプロとしてここへ移籍した先駆者・松下浩二と鬼頭明により、卓球ファンはその未踏のユートピアをまざまざと知った。

特に注目されたのが、松下選手が加入したデュッセルドルフ。チャンピオンチームとして長年に渡り君臨した、サッカーで言うレアル・マドリードのような夢の最強チーム。

日本ではトップの松下選手も、ここでは1番手、2番手では無く、3~4番手。それでも奮迅の活躍を魅せ、あの馬琳選手を打ち破った試合は今でも語り継がれる。

matsu画像出典:卓球王国

そして何せ凄いのがスター軍団ぶり。ロスコフ、オフチャロフ、サムソノフ、パーソン、黒豹・ダグラス、フェッツナー、メイス、フレイタス、ズース、バウム、さらに水谷隼、岸川聖也という、卓球界の銀河系軍団とも言えるメンツによる最高のプレーで卓球界を引っ張ってきた。

しかし・・・いま、その地位が大いに危ぶまれている。

ヨーロッパチャンピオンズリーグ準々決勝ではフレイタス、王建軍を擁するポントワーズ(フランス)に3-1と敗北。さらにブンデスリーガ勢が準々決勝で全て姿を消すという、リーグ自体の退潮を感じさせる出来事となった。ドイツ・カップでは4連破を飾ったものの、ブンデスリーガでは1月30日現在で4位と、元気が無い。

そのワケが現れているのが、メンバー構成である。

dhu4

まずエースは良い。あのドイツのスーパースター、ティモ・ボルだ。07年からクラブに君臨するレジェンドで、彼の手でブンデスリーグ7回、ドイツカップ6回、チャンピオンズリーグ3回、ETTUカップ1回のタイトルをもぎ取った、と言っても過言では無いだろう。

そのボルは良いとして、190cmドイツタワー・フランチスカ、バンダナ野郎ことインドのエース・アチャンタ、バックはカット&フォアはドライブのギリシャ男・ジオニスという…正直微妙極まりないメンツだ。

dhu3

ボル以外は、残念ながら常勝軍団のメンツでは無い。

さらに来季はここからフランチスカが抜け、オーストリアのブロック野郎・フェゲルルと、卓球王国スウェーデン復活のカギ・アントン・カールバーグ18歳が加わる事になる。

片や世界ランク22位の強豪、片や将来を嘱望されるスウェーデンのエース候補と言えど、今までデュッセルドルフを彩ってきたスターたちには及ばない。

ロスコフとサムソノフという2大巨塔が並び立ち、そこにメイスや松下らが名を連ねた94~00年、ボル、オフチャロフに加え、フレイタスや水谷らが居た07~10年はおろか、それ以外の年と比べても、このメンツが極めて寂しいのがわかる。

つまり哀しい事に、デュッセルドルフはもはやそこまでお金を出す余裕が、恐らく無いのだ。

このデュッセルドルフを含む、ブンデスリーガの停滞の要因の一つには中国スーパーリーグの台頭もある。

例えばブンデスリーガのスーパースター、ティモ・ボルのデュッセルドルフの年俸が3600万円くらい(30万ユーロ)。この額はブンデス最高額と言われている。

takkyu

翻って、中国スーパーリーグの場合だと、張継科、馬龍、許シン、樊振東などのトップ選手もほぼ同等額を貰っている。

しかし、圧倒的に違うのがリーグの開催期間だ。

中国スーパーリーグは6月から8月にかけての3ヶ月に集中して行われる。

その一方ブンデスリーガは8月から3月にという長きにかけて行われ、リーグ戦の他にもトーナメント制のカップ戦「ドイツ・カップ」など試合が多い。さらにワールドツアーにも参戦する必要があるため、正直ブンデスリーガの方が「ブラック」なのだ。
(中国リーグの方が過密日程ではあるが)

片や3ヶ月、片や8ヶ月で同額では比べようがない。待遇は中国スーパーリーグの勝利である。さらに地理的な距離の問題で、アジア系選手はまず中国がブンデスを目指さなくなり、王励勤、馬琳が参戦していた頃と比べリーグレベルが落ちた。また韓国や台湾、日本選手らも中国リーグをより目指すようになった。

さらに要因として挙げられるのが、他国リーグ(チーム)の台頭。

mizutani3

中でもロシアリーグのオレンブルグはその最たるものだ。天然ガス企業では世界最大規模を誇るガスプロムというビッグスポンサーによる潤沢な資金力で、常勝軍団への道を歩みだしている。今年のトピックスは何と言っても水谷隼の移籍。これにより、来季はオフチャロフ、サムソノフ、そして水谷隼という、ヨーロッパのチームでここに何処が勝てるんですかという反則レベルの強さを誇るチームとなる。

正直今のデュッセルドルフが戦っても、勝ち目は薄いだろう。ボルが必ず2点を獲って、他で1点を獲るという中々の無理ゲーレベル。

さらに馬文革、丁松、フランツ、丹羽孝希、松平兄弟なども所属し、05~06、06~07シーズンを連破している強豪のTTCフリッケンハウゼンがスポンサーの撤退によりブンデスの撤退に追い込まれるなど、リーグ自体の停滞が示されている。

あまりお金が無くなり、最強軍団と言えなくなったデュッセルドルフはこれからどうすれば良いのか。答えは一つ、アーセナル化である。

aresenal

サッカーの世界の場合、金銭的にビハインドを背負ったチームたちは「若手を育成し、ビッグクラブに高く売る」というビジネスモデルで経営を立ち行かせている。

デュッセルドルフもその例外では無く、スター軍団を誇示できなくなった今、そのようなビジネスで食べていく事に舵を切るのが先決だ。

つまり極端に言うと、近い将来的には、オレンブルグのようなスター軍団や、中国の経済発展と共に移籍金や年俸の高騰が予想される中国のスーパーリーグや、甲Aリーグに選手を供給するようなチームになっていく、というのが生きる道だ。

もしかすると、まだ戦力としては少し頼りない18歳のアントン・カールバーグが加入したのは、育成しての移籍金ビジネスに舵を切ったから証拠なのかも。

まるでサッカーのアーセナルのように、チャンピオンズリーグで上位に入る戦力を残しつつ、高く売れる選手が出来たらバルセロナやレアル、マンUなどのビッグクラブへ売却していく。そんな今までとは違った輝きを、今後のデュッセルドルフは放っていくのかも知れない。

それは、いつか必ずやってくる、ボルがデュッセルドルフを離れる時に、より顕著になっていくだろう。

LINEで送る
Pocket

4 Comments

  1. これを見ると日本のプロリーグ実現はは遠く果てしないな。水谷選手が1000万じゃ集まらない的なこと言ってたけどそれもわかるな。

  2. ありがとうございます。ボルや張継科らが貰っている額は本当にトップの方の選手という事なので、もう少し平均としては安いとは思われますが、確かに「卓球選手だからみんな3桁万円で大丈夫」という安易な考えは出来ないですね。ただ、今度の世界卓球で男女とも決勝進出をしたり、リオ五輪で男女メダルを取れば、プロリーグへ向けての流れの勢いはつくのではと思います。ぜひ活躍を期待したいですね。

  3. こんちにちは、10年くらい前にプレーするのはやめて見る専になってるものです。

    面白い切り口の記事がたくさんあってすべて読ませていただきました。更新楽しみにしてます。

  4. 嬉しいお言葉、どうもありがとうございます!なかなか忙しくてブログを書く時間が取れないのですが、おかげで創作意欲がバッチリ沸きましたので笑、近々更新させて頂きますね。

コメントを残す

メールアドレスが公開されることはありません。 * が付いている欄は必須項目です